オオカミ尿はイノシシに効くのか?

オオカミの尿が販売されているって知ってますか?

少し前にアウトドア特集のテレビ番組で知ったんですけど、熊などの危険な動物をテントに近づけさせなうようにキャンプサイトの周りにオオカミの尿を撒くらしいんです。オオカミの尿の臭いは危険DNAレベルで判断するとか説明してました。

ホントかよ!笑

 

 オオカミの尿とは

某メーカーの商品説明では、

狼の尿100%の獣よけで、食害をおよぼす有害獣であるイノシシ、クマ、シカ、サル、野犬、ハクビシン、アライグマなどを有効的に近づけにくくする商品です。

 と書いてある。さらに、日本国内にて様々な動物に対する検証を行い、確実に効果を確認している。とも書いてある。製造にコストがかかるのか、350g程度で7000円と高め。そのせいなのか、偽物とかコピー品まで出てきているし!笑

 

テレビでの紹介や、大手企業への導入実績もあるし、値段は高いけど効果があるのか!と思っちゃいますよね。Amazonのレビューでは☆1つが多く、そのほとんどが全き効かなかったというような意見が多いですね。

メディアの評判と世間の評判の乖離、面白くなってきた。笑 

オオカミの尿に関する論文を探してみよう!

 

論文を探してみた

Ciniiでオオカミ尿についての論文を探してみると8件ヒットですね。(2020年8月現在)

フリーで読める論文の概要をまとめてみました。

ci.nii.ac.jp

 

 

1. 論文タイトル:イノシシはオオカミ尿を忌避するのか?

【研究背景と目的】

イノシシは犬並みの嗅覚があり、かつての天敵であったオオカミの糞尿に対して本能的に危険を感じ取り、忌避すると考えられているが、忌避効果は科学的に明らかにされていない。

そこでイノシシ被害を軽減するための基礎的な知見を得るために、市販のオオカミの尿が野生のイノシシに対して忌避効果があるのかを調べた。

 

【実験方法】

鹿児島県にある入来(いりき)牧場内の林地で誘引場を設けその中に飼料を毎日設置する。誘引場は大きい箱わなのような感じ。(もちろん捕らえる機能は無し)

入来牧場は家畜専門の教育・研究施設のようですね。鹿児島大学の施設なのかな?

 

オオカミ尿はメーカー推奨方法に準じてプラスティック容器に入れて使用する。

実験は3期に分け合計9日間行う。

  • 第1期:容器及び尿のいずれも設置しない(3日間)
  • 第2期:容器のみ吊る(3日間)
  • 第3期:容器に尿を入れて吊るす(3日間)

 

【結果】

  誘引場に侵入する
イノシシの数 頭/日
誘引場に入る
平均時間(約) 秒/頭
備考
第1期 70 45 容器及び尿なし
第2期 50 150 容器のみ
第3期 68 25 容器に尿を入れる

 

第1期(容器、尿なし)を基準に考えると、第2期(容器のみ)は誘引場に侵入するイノシシの数は減っているが、第3期(容器に尿入り)は第1期とほとんど変わらない。第2期に侵入するイノシシが減ったのは、見慣れないプラスティックの容器があったため警戒したようです誘引場に入る平均時間を見ても第2期に警戒しているのが上の表からわかりますよね。

第3期はオオカミの尿の臭いがあるはずですが、その匂いには全く警戒していないことがわかります。

この実験では、オオカミの尿が野生イノシシに対して忌避効果がないことを示していますね。

 

2. エゾシ力に対する忌避材の効果試験

ごめんなさい、素人には読みにくかったです。。。

【研究目的】

オオカミの尿により、餌場である牧草地に対する接近や特定の出入り口からの侵入阻止に効果があるかどうかについての調査。

 

【実験方法】

 野生個体に対する実験

オオカミの尿を設置した場所を自動センサーカメラで監視し、カメラのみを設置する対象区とオオカミの尿とカメラを設置する試験区に分けてそれぞれの観測数を比較する。

 

飼育個体に対する実験

餌場の周りにオオカミの尿を散布し餌場を避けるかどうかの実験

 

【結果と考察】

野生個体に対する実験

グラフが見にくくて、わかりづらいんですが、野生個体に対する実験ではオオカミの尿設置前後の観測数を比較するとオオカミの尿設置前が15頭/日、オオカミの尿設置後が7頭/日でオオカミの尿設置後の方が観測数が減っている(オオカミの尿による忌避効果あり)。

でも、オオカミの尿設置直後からすぐわきを通過する個体もいたことから多くの個体がオオカミの尿に警戒しているとは考えづらい。

(オオカミの尿に忌避効果がないことを前提に実験をしているような気が。。。)

 

飼育個体に対する実験

オオカミの尿材の存在に対して忌避行動をとることなく、設置直後から付近の餌場から餌を食べ始めた。オオカミの尿を直接嗅ぐ行動も見られたが、嗅いだ瞬間に逃げたり遠ざかることはなかった。

(飼育個体は危険がないから警戒をそもそもしないのかな?)

 

2つの実験から、草食動物の忌避行動は必ずしも嗅覚刺激のみによったり、危険の察知に際して嗅覚を優先しているとは限らない。遠くまで見渡せるような牧草地の場合は、視覚や聴覚を使い危険を察し、見渡しの悪い林とかだと嗅覚や聴覚を使い危険を察するのではないか。

 

 

3. オオカミ糞のニホンジカ(Cervus nippon)に対する嫌悪効果

英語の論文なので読めない。笑

 

 

以上の3つの論文、、、いや2つの論文を読んで感じたこと 

オオカミの尿の臭いによって野生動物を近づけなくさせるっていうメーカの主張は非常に怪しいですね。学習能力があるクマにしてもおそらく自分自身の経験や仲間の経験による行動を行うんじゃないかと思います。先祖代々の知識なんてものはないと思いますね。

ってゆうかそもそも、オオカミの強さって神レベルなのか?笑

 

エゾジカの論文は少し読みにくかったけど、納得できる部分がたくさんあった。野生動物は嗅覚のみで判断するわけではない。感覚器官をすべて用い総合的に危険か判断しているだろうし、いる場所によって判断基準もまちまちだ。という部分はすごく納得できた。

本州での狩猟の場合、広大な牧草地ではなく、見通しの悪い林が多いですよね。そういうところでは、枯葉を踏む音とかに特に警戒しているのかな。

野生動物の場合、常に死と隣り合わせですよね。特に草食動物は。人間はそんな状況には滅多にならないけど。

だからこそ、地形や周りの状況から動物の気持ちになって考えて歩く必要がありますね。なかなか、単独猟で成果を上げるのは難しそうですが、難しいからこそ成果を上げた時の達成感も大きいはず。

そして肉も独り占め。笑